「健康診断に行くと病気にされる」
「医者は人を病気にして儲けている」
SNSでは、こうした主張を見かけることがあります。
健康意識の高い方ほど、「本当に検診は必要なのか」と疑問に感じることもあるかもしれません。
こうした投稿では
・検診で不要な病気が見つかる
・レントゲンなどの放射線が危険
・医療は患者を増やすビジネス
といった説明がされることがあります。
ですが、この話を医療制度・疫学・放射線量の観点から整理してみると、少し違った見え方になります。
結論の方向性から言うと、現在の医学では
健康診断は病気を早期に発見し、重症化を防ぐことを目的とした医療制度であり、「人を病気にするための仕組み」という説明は制度上も医学的にも成立しにくいと考えられています。
なぜ「検診に行くと病気になる」という話が広がるのか
この話が広がる背景には、
「過剰診断」という概念が関係している可能性があります。
過剰診断とは、検査によって
・命に影響しないような小さな異常
・将来問題にならない可能性のある変化
が見つかることを指す場合があります。
例えば
・甲状腺の小さな結節
・軽度の脂肪肝
・良性のポリープ
などです。
こうしたケースでは
「見つかった=すぐ治療が必要」というわけではなく、
経過観察になることも多いとされています。
ただし、この概念がSNSで単純化されると
「検診は人を病気にする」
という極端な説明に変わってしまうことがあります。
しかし実際の医療では、検診の目的は
重症化する病気を早期に見つけることです。
例えば
・大腸がん
・胃がん
・乳がん
・高血圧
・糖尿病
などは、早期発見によって治療の選択肢が広がることが知られています。
レントゲンの放射線はどのくらいなのか
健康診断の中で特に誤解されやすいのが
放射線の量です。
放射線の量は
ミリシーベルト(mSv)
という単位で表されます。
代表的な例を比較すると次のようになります。
放射線量の目安
・胸部レントゲン1回
約 0.05 mSv
・自然放射線(日本で1年間に浴びる量)
約 2 mSv
つまり胸部レントゲン1回の放射線量は
年間自然放射線の約40分の1程度とされています。
さらに身近な例としては
飛行機での被ばく
・東京〜ニューヨーク往復
約 0.1〜0.2 mSv
とされており、
飛行機旅行の方が胸部レントゲンより放射線量が多い
という計算になります。
もちろん医療では
・必要最小限の放射線量
・被ばくの最適化
が原則とされています。
そのため現在の医療機器は、以前よりも
被ばく量を減らす方向で改良が進められているとされています。
検診は「病気を作る仕組み」なのか
もう一つよく見かけるのが
「医者は患者を増やすために検診を勧める」
という説明です。
しかし医療制度の視点から見ると、この構造も単純ではありません。
日本では
・特定健診
・がん検診
・企業健診
などが制度として行われています。
これらの制度は
・生活習慣病の予防
・医療費の増加を防ぐ
・重症化の防止
といった目的で設計されています。
つまり制度の考え方としては
病気を増やすことではなく、重症化を防ぐこと
が目的とされています。
例えば糖尿病や高血圧も、早期の段階で生活習慣の改善や治療を行うことで
重い合併症を防げる可能性があると考えられています。
そのため検診は
「病気を作る仕組み」
というよりも
病気を早く見つけて重症化を防ぐ仕組み
として設計されています。
健康情報を見るときのポイント
SNSでは、健康に関する強い主張が広がることがあります。
そうした情報を見るときは
・医学的な単位やデータが示されているか
・制度の仕組みと整合しているか
・極端な説明になっていないか
といった点を確認してみると、理解が整理しやすくなることがあります。
医療はとても複雑な分野なので、
「すべて危険」
「すべて安全」
といった単純な説明だけでは理解しきれない部分も多いと考えられています。
まとめ
今回のポイントを整理すると
・健康診断は病気を早期に発見するための医療制度
・過剰診断という概念はあるが、それだけで検診が不要とは言えない
・胸部レントゲン1回の放射線量は約0.05mSv程度
・これは自然放射線や飛行機旅行より少ないレベル
・検診は重症化を防ぐ目的で設計されている
このnoteでは
・健康情報の誤解
・免疫や栄養のしくみ
・SNSで広がる健康トピック
・健康ビジネスの構造
などを、薬剤師の視点からわかりやすく整理しています。
健康情報はSNSで極端に語られることもあります。
そのためこのnoteでは、制度・科学・研究の視点から落ち着いて整理することを大切にしています。
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