「昔は麻疹にわざとかかっていたから大丈夫?」
「ワクチンより自然感染の方が良いのでは?」
SNSではこうした意見を見かけることがあります。
特に子どもに関わる内容だけに、不安や迷いを感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、麻疹(はしか)について現在の医学でわかっていることを整理していきます。
結論から言うと、
麻疹は単なる発熱や発疹の病気ではなく、免疫に影響を与える感染症である可能性が示唆されています。
なぜ「もらいに行く」という考え方が広まったのか
かつては医療やワクチンが今ほど普及していなかったため、
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一度かかれば免疫がつく
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子どものうちに済ませた方がいい
という考え方が広まっていました。
この背景には、当時の医療環境や情報の限界があります。
また「自然な方法の方が安心」という感覚もあり、
現在でもその考え方が一部で残っていると考えられます。
麻疹はどんな感染症なのか
麻疹はウイルスによる感染症で、主な症状として
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高熱
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発疹
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咳や鼻水
などが知られています。
しかし近年では、それだけでは説明しきれない特徴があることがわかってきました。
麻疹と免疫の関係
麻疹ウイルスは、体を守る免疫細胞に影響を与えることが知られています。
特に関係するとされるのが
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メモリーB細胞
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メモリーT細胞
と呼ばれる、過去の感染を記憶している免疫細胞です。
研究では、麻疹に感染するとこれらの細胞が減少し、
結果として免疫の記憶が弱くなる可能性が示唆されています。
この現象は「免疫記憶の低下(Immune Amnesia)」と呼ばれることがあります。
感染後に起こりうる影響
2019年には、
Harvard Medical School や
Brigham and Women’s Hospital の研究グループが、
Science に関連研究を報告しています。
この研究では、麻疹感染後に
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既存の免疫の一部が失われる可能性
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その後の感染症リスクが変化する可能性
が示されています。
つまり麻疹は
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その場の症状だけでなく
-
その後の体の防御力にも影響する可能性
がある感染症と考えられています。
合併症というリスク
麻疹は回復するケースも多い一方で、
いくつかの合併症が知られています。
代表的なものとして
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肺炎
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脳炎
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SSPE(亜急性硬化性全脳炎)
などがあります。
これらは頻度としては高くないものもありますが、
重症化する可能性があるため注意が必要とされています。
「自然感染の方が安全」という考え方について
「自然にかかって免疫をつける方が良い」という考え方は、
一部では今も見られます。
ただ現在の医学では
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感染そのものにリスクがある
-
合併症の可能性がある
-
免疫への影響が指摘されている
といった点が考慮されています。
そのため、感染によって免疫を得る方法と、
ワクチンによって免疫を得る方法は、同じようには扱われていません。
ワクチンの役割
麻疹ワクチン(MRワクチン)は
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感染や重症化の予防
-
合併症のリスク低減
を目的として使われています。
国際的にも
World Health Organization や
Centers for Disease Control and Prevention
などの機関が接種を推奨しています。
ワクチンは、感染によるリスクを避けながら
免疫を獲得する方法として位置づけられています。
薬剤師としての視点
医療の現場では、麻疹は
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感染力が非常に強い
-
合併症に注意が必要
-
予防が重要
な疾患として認識されています。
また近年の研究を踏まえると、
単なる「一度かかれば終わりの病気」とは言い切れない側面もあります。
そのため、予防の選択肢については
リスクとベネフィットのバランスで考えることが重要とされています。
健康情報をどう読み解くか
今回のテーマのように、
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昔の常識
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SNSでの体験談
がベースになっている情報は、
現在の医学とずれていることもあります。
健康情報を見るときは
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情報の根拠は何か
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現在の研究と合っているか
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リスクについて触れているか
といった点を意識すると、理解しやすくなります。
まとめ
・麻疹は単なる発熱の病気ではなく、免疫に影響する可能性がある
・感染後に免疫の記憶が低下する可能性が示唆されている
・肺炎や脳炎などの合併症リスクがある
・自然感染には一定のリスクが伴う
・ワクチンはリスクを抑えながら免疫を得る方法とされている
このnoteでは
・健康情報の誤解
・免疫の仕組み
・感染症と予防
・医療の考え方
を薬剤師の視点でやさしく解説しています。
情報に振り回されず、落ち着いて判断したい方は、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。




